3級審判員の悩める日々
とあるサッカースポーツ少年団の指導者で、かつサッカー3級審判員である私のサッカー三昧な日々
ブラジル代表対クロアチア代表の試合(ワールドカップ2014ブラジル大会 開幕戦)の公式記録ほか
   


この試合のFIFAの公式記録PDFはこちら

http://resources.fifa.com/mm/document/tournament/competition/02/36/92/26/eng_01_0612_bra-cro_fulltime.pdf

 

西村さんがカードを提示したプレーと、試合の流れに大きく関係したと思われるジャッジのところを中心にレビューをしておきます。

 

前半26分01秒付近。

ブラジル代表10番(NEYMAR 選手)が、クロアチア代表10番(Luka MODRIC 選手)の首から顔にかけて腕をぶつけたシーン。まず、ボールが落下してくる前にLuka MODRIC 選手が競り合いに参加してくる可能性があることを目視で確認した上で、明確な意図をもって脇を開けひじを高く張っているので悪質なファウルです。ということで「ラフプレー」。

 

「『無謀に』相手競技者を『打った(striking)』」と判断されても仕方がないと思います。

 

後半19分53秒付近。

クロアチア代表5番(Vedran CORLUKA 選手)が、ブラジル代表10番(NEYMAR 選手)がドリブルしているボールに対し、スライディングタックルをします。

 

結局CORLUKA 選手の足はボールに触れることができず、パスを出し終えたNEYMAR 選手にアフターでタックルしてしまった形です。(もし、仮にボールに触れることができていたとしても、ボールと一緒にNEYMAR 選手の足をすくってしまうようなタックルだったので、やっぱりイエローカードが提示されていたと思います。)これもやはり「ラフプレー」ですね。

 

競技規則 ガイドライン 第12条 ファウルと不正行為 

不用意な、無謀な、過剰な力で

(中略)

〝無謀な〟とは、競技者が、相手競技者が危険にさらされていることをまったく無視して、または結果的に危険となるプレーを行うことである。
●無謀な方法でプレーした競技者は、警告されなければならない。

(後略)


  

後半23分42秒付近。問題の「PKの元となったファウル」。

クロアチア代表6番(Dejan LOVERN 選手)が、ブラジル代表9番(FRED選手)を倒したシーン。正直、「えっ、とるの?」と思うのと同時に、「やっぱり国際審判員はペナの中でボールを受け取ったあるいは、受け取ることができただろうと思われる選手を押える行為に対しては、厳しいよなぁ。」と思ったのでした。

 

皆さん、覚えていますか? 

ちょうど2年前(2012/06/12)に、最終予選のオーストラリア戦で、内田選手がペナの中でALEX BROSQUE選手を押えたという理由でサウジアラビアのアル・ガムディ・カリム・イブラヒム主審からPK+警告を受けた時のことを。(過去記事 「W杯最終予選(2012.06.12 日本代表 vs オーストラリア代表)の公式記録ほか(その2)」 参照。)

 

あの時の状況と、かなり似ています。 

あの時、ALEX BROSQUE選手は内田選手に押えられたことをアピールしませんでしたが、主審はファウル認定しました。今回FRED選手は倒れて「押えられた」ということをオーバーにアピールしただけ、という感じです。

 

肩に手はかかっていたが、プレーに影響するほどのものではなかった?

いえいえ、FIFAは現在、ゴール前で不正に手や腕を使って相手の体を押さえ、動きを妨げる行為への監視も強く求めているのですよ。

 

上川徹さん(JFA審判委員会委員長)が、FIFA U-17ワールドカップ UAE 2013 の視察で、FIFAトップレフェリーによる最新のレフェリングの国際標準の報告をしてくださっていたのを過去記事 「テクニカルニュース Vol.58(2013年11月26日発行) より」 で紹介したときの文章を再掲示しておきます。

 

--- これより 転載 ---

また、ゴール前で不正に手や腕を使って相手の体を押さえ、動きを妨げる行為への監視も強く求められていました。グループステージでは、行為の把握が難しいこともあり、的確な判定が下せず、反則が見過ごされているケースもありましたが、セカンドステージにおいては予防のマネジメントとともに厳しい監視が行われました。日本だけでなく、世界においてもホールディングは課題の一つとなっていることがうかがえます。

--- 転載 ここまで ---

 

プレミア・リーグなどドメスティックなリーグでは、ファウルにはなっていないかも知れません。でもワールドカップは国際大会であり、そこには国際標準のレフェリングやファウルの基準があるのです。

 

不必要な位置にある手にボールが当たった場合、そこには未必の故意があったとして、ハンドリングの反則をとられてしまう可能性が高くなります。

 

ホールディングもまたしかり。不必要な位置で不自然な形で手を使って相手競技者に触れていた場合、相手競技者を押えたと判断されて、相手チームにPKを献上するとともに、自身はイエローカードをもらってしまう、ということになりかねないのです。

 

日本代表の選手の皆さんにはぜひ気をつけていただきたいところです。 

 

「誤審」「誤審」と騒がしいのですが、審判活動をされている方は、これらの情報を踏まえたうえで、各自ご判断くださいませ。 

 

そうそう、LOVERN 選手に出されたイエローカードの理由は、「反スポーツ的行為」です。(西村さん、食い下がるLOVERN 選手に対して、繰り返し「Holding!」しか言っていないような・・・)

  

競技規則 ガイドライン 第12条 ファウルと不正行為

相手競技者を押さえる

手、腕、または体を用いて相手競技者の進行や動きを阻止することは、相手競技者を押さえることである。

(中略)

懲戒の罰則

●相手競技者を押さえて、相手競技者がボールを保持することを妨げる、または有利な位置を得ようとするのを阻止する競技者は反スポーツ的行為で警告されなければならない。

(後略) 
  

 

後半37分28秒付近。これまた物議を醸しているGKとの接触に関して。

 

現在、ゴールキーパーに対する「キーパーチャージ」という項目は、競技規則上存在していません。(昔はありました。)

 

キーパーチャージという言葉はなくなったものの、ゴールキーパーは自陣ペナルティーエリア内でボールを手で扱うことができる特殊なプレーヤーであるため、若干フィールドプレーヤーの基準とは異なる基準が運用面で存在している感じです。(これはゴールキーパーの安全を確保するためです。) 

 

昔のJFAのサイトに、審判委員会の方が書かれた①ポイントレッスンの第7回の記事が、残っていますので紹介しておきます。

http://community.jfa.jp/modules/referee/1point/2008/081128.html 

 

JFAのサイトに書かれている内容を読んでいただければ、西村さんの判断(GKへのファウルチャージ)が正しいことが理解していただけると思いますが、もう少し補足しておきましょう。

 

基本的に、浮き球に対する競り合いにおいては、先に落下点に入っているほうの選手に優先権があります。遅れて落下点に入ったほうの選手は、先に落下点に入ってボールをヘディングしようとしている選手に「不用意に」または「無謀に」あるいは「過剰な力を用いて」身体を接触させた場合、反則となります。

 

(先に落下点に入って「正当なタイミングでジャンプしていた選手」の下にもぐり込む行為や、先に落下点に入ってジャンプのタイミングをうかがっている選手にのしかかる行為も反則です。)

 

基本的に、と書いたのは先に落下点に入っていても、競り合りあいに参加しない(=ヘディングしようとジャンプしない)場合は、身体を用いて相手競技者の動きを阻止したことになり、ホールディング(相手競技者を押えた)の反則となります。

 

後半37分のプレーは、ブラジル代表GK(JULIO CESAR 選手)がクロアチアのクロスの落下点に先に入っていて、手でキャッチすべく正当なタイミングでジャンプをしています。

 

そこに少し遅れてクロアチアの18番(Ivica OLIC 選手)が飛び込んできて、GKのJULIO CESAR 選手の身体に自身の身体を当ててしまいます。この身体的な接触がなければJULIO CESAR 選手がファンブルすることなく手で捕球出来ていた可能性が高いので、OLIC 選手の反則となりました。

 

ただ、少し遅れて入ってきてはいたものの、「無謀に」身体を当てたわけでも「過剰な力を用いた」わけでもないので、イエローカードやレッドカードは提示されませんでした。(「不用意」レベル=カードなし)

 

後半41分50秒付近。

ルーズボールを拾ってカウンター攻撃をしかけようとしたクロアチアの10番(Luka MODRIC 選手)の足をブラジル代表17番(LUIZ GUSTAVO 選手)が「無謀に」踏んでトリップさせたということで、ラフプレーですね。

 

LUIZ GUSTAVO 選手は、左足で踏んだだけじゃなくて、右足でもケリを入れているようですが、そちらはアクシデント的なヒットという判断でしょうか。 

 

Luka MODRIC 選手が触れたボールは、チームメイトのクロアチア4番(Ivan PERISIC 選手)のほうに流れたたため、アドバンテージを適用しかけますが、あまりクロアチアに有利な状況にならなかったので、ロールバックしてのイエローカード提示となりました。 

 

個人的にはそのままクロアチアがフィニッシュまで行った状態になり、アウトオブプレーのタイミングでGUSTAVO 選手を警告するというパターンを見たかったのですが。

 

西村さんの遅延行為に対する予防的な対応 

後半42分過ぎ。

NEYMAR 選手が交代して退くシーンで、NEYMAR 選手がのんびりピッチから去ろうとした場合、「遅延行為」で警告しなければならなくなり、そうなると1試合で2枚目の警告となってレッドカードを提示しなければならず、交代も認められなくなってしまうので、西村さんはNEYMAR 選手に速やかにピッチの外に出るように促しています。

 

後半45+3分。

両足がつってしまったOSCAR 選手に対し、「担架を呼ぼうか?担架を呼ばないなら早く立ちあがりなさい。」というような声掛けをしている感じです。

 

このあたり、慎重な対応というか出さなくて済むカードを出さずに済むようにゲームマネジメントをしっかりしていますね。

 

後半45+4分。 

GKのJULIO CESAR 選手の靴紐を、ブラジル代表4番(DAVID LUIZ 選手)が結んでいるというか結んでいるフリ?をしたあと、西村さんがいると思われる方向に右手で合図しているので、恐らく西村さんは「Hurry!」とか「Hurry Up!」くらいの声掛けをしていたと思われます。

 

 

関連記事 ☆

「W杯最終予選(2012.06.12 日本代表 vs オーストラリア代表)の公式記録ほか(その2)」

「テクニカルニュース Vol.58(2013年11月26日発行) より」 

「ゴールキーパーに対する反則」 

「キーパーチャージという反則はない(清水 vs C大阪 の試合から その2)」

「昔と大きくルールが変わっているところ」 

「キーパーチャージという反則は現在存在しない(第92回高校サッカー準々決勝 履正社(大阪) vs 四日市中央工業(三重)の試合から)」

    




 

 
 
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No title
ロブレンのホールディングに関して。
私も正直、「抱え込むような手の位置だけで取られる」たぐいの厳し目のホールディング判定かと思いましたが、スローで3角度から見直した所、がっつり系のあからさまなホールディングでした。

こちらの動画が分かりやすいので、ぜひぜひご覧になって見てください。
youtu.be/eyNk_Q_c_CE

ロブレンは左から来たボールに向かって行きましたが、ボールは前を通り過ぎて自分の右前方でフレッジがトラップしました。そこで左足で踏ん張りブレーキを掛けてすぐさま右反転を試みています。
ところがフレッジがトラップした右足を大きく引き下げていち早く右反転動作を始めた為、このフレッジの右足に抑えられる形でロブレンは右足を後ろに引くことが出来ずバランスを崩し、仕方なく右足つま先で思いっきり右斜後ろにバックステップを踏む事で体を右回転させています。
ただ、そのままだとバックステップによってフレッジから引き離されてしまうので、バックステップと同時に左手でフレッジの肩につかまり、後ろに倒れそうな重心を前に移動させつつ左足に体重を移動したあと、ようやく前重心で右足を着くことが出来ています。
そういうわけで、手の位置だけのホールディングや、同方向に向かっている選手の一方が後ろから引っ張るホールディング等に比べて遥かにあからさまな、「ボールと逆方向に向かう選手がボールに向かってシュート体勢に入る選手の上体の一番不安定なところを体重を載せて引っ張り上げる」という、これを取らずして何を取るというようなファールであったように思います。

誤審と騒がれてしまったのは国際映像の角度の問題が大きそうです。
ゴールラインを6時として、4時と10時方向からのカメラはちょうどロブレンのバックステップ方向と重なっていて分かり難いのですが、8時方向のカメラだと後傾の様子が分かり易く、西村主審のいた12時方向からも、ロブレンのヨロけとバックステップがよく見えたのではないでしょうか。
2014/07/15(火) 04:20:00 | URL | alcyone #79D/WHSg [ 編集 ]
No title
 
alcyone さん、はじめまして&コメントありがとうございます。
 
情報ありがとうございます。(動画を確認させていただきました。)
 
ま、FIFAがチーム西村を残留させて、3位決定戦の第4審判員およびリザーブ副審を任せたということから、FIFA内ではまったく「誤審」とは判断していないように感じられますね。
 
2014/07/15(火) 23:23:28 | URL | TOM3 #79D/WHSg [ 編集 ]
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